第142回獣医学会・日本比較薬理学・毒性学教育研究集会

小林 誠、岸 博子、郭 鳳玲、川道穂津美、苗 俊英、三輪さおり、王 晨、加治屋勝子、徐 丹
( 山口大学大学院医学系医学科・器官制御医科学講座・生体機能分子制御学)

「血管異常収縮(攣縮)の分子機構の解明〜分子標的治療薬の開発を目指して〜」

 血管異常収縮の原因として、Rhoキナーゼ(ROK)を介する血管平滑筋のカルシウム非依存性収縮が注目されているが、その上流の因子として、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を同定した。SPCは、Srcファミリーチロシンキナーゼ(Src-TK)の活性化を介して、ROKを活性化し、血管を採取した動物の血清コレステロール値依存性に、カルシウム非依存性収縮を引き起こした。RNA干渉によってSrc-TKの1種Fynをノックダウンさせた血管平滑筋細胞では、SPCによる収縮が抑制された。バキュロウイルス系で作製した活性型Fynは、βエスシンによるスキンド血管平滑筋において、カルシウム非依存性収縮を引き起こし、この収縮はROK阻害薬で抑制された。カベオリンを指標に、コレステロールが蓄積した膜ラフトについて検討すると、SPCによりFynとROKは細胞質から膜ラフトへ移動した。βシクロデキストリンによってコレステロールを除去すると、細胞膜からカベオリンが除去され、SPCによるFynとROKの移動と血管収縮が抑制されたが、高K脱分極による収縮には無効であった。リン酸化プロテオミクスによってFynの下流の新規分子とリン酸化部位を同定した。以上より、膜ラフトとその局在蛋白Fynは血管異常収縮に重要な役割を果たしていると考えられた。また、カルシウム制御系には影響を与えず、SPC経路を特異的に阻害して異常収縮のみを抑制する新規分子を探索中である。